2013年12月25日

2013年の認識論を振り返る

さてさて、このブログもさっぱり更新しなくなってしまいましたが、毎年こーれーのこれだけはせめても、ということで、「2013年の認識論を振り返る」です。しかしながら、今年は僕にとっても激動の年でした。2005年7月からカナダに在住していたのですが、7年9ヶ月ぶりに帰国して、日本で某大学で1年間勤務することになったからです。その仕事に加え、今年は自分の勉強、研究にも認識論以外の分野が占める比重がかなり増えて、正直なところ最近の認識論の動向を去年までに比べるとあまりフォローできていません。しかし、以下僕に目に付いた限りで、今年の動向を簡単に紹介します。

1、哲学方法論についての研究が相次いで出版される

実験哲学の台頭以降、哲学の方法論を巡ってさまざまなことが論じられるようになったのですが、ようやくそれらが書籍という形で目につくようになりました。その中には、認識論、あるいは分析哲学よりももっと広い観点から哲学一般を論じる入門書ももあれば、

Soren Overgaard, Paul Gilbert & Stephen Burwood (2013). An Introduction to Metaphilosophy (Cambridge Introductions to Philosophy). Cambridge: Cambridge University Press.
Kerry E Howell (2013). An Introduction to the Philosophy of Methodology. Los Angeles, CA: Sage.

分析哲学にのみ定位したより専門性の高いアンソロジーまであります。

Matthew C. Haug (2013). Philosophical Methodology: The Armchair or the Laboratory? Abingdon and New York: Routledge.
Andrew Chapman, Addison Ellis, Tyler Hildebrand, Henry Pickford, & Robert Hanna (2013). In Defense of Intuitions: A New Rationalist Manifesto. London: Palgrave Macmillan.

哲学方法論における論点で特に認識論でさかんに議論されているのは、「直観とは何で」、また「どのようにして直観が哲学的な主張を正当化するのか」という問題です。これらに直接取り組む、若き才能の著作が二つ出版されました。

Jonathan Jenkins Ichikawa & Benjamin W. Jarvis (2013). The Rules of Thought. Oxford: Oxford University Press.
Elijah Chudnoff (2013). Intuition. Oxford: Oxford University Press.

「直観とは何か」という問題に対し、両者が全く対立する見解を擁護しているのも興味深い。前者の著者のひとりIchikawaは同僚でしたので、この本の草稿を読む読書会を僕が企画して、認識論者ばかりの豪華なメンバーで読書会したりしました。

2、アプリオリ性への関心が再び高まる

哲学的主張の正当化の問題は、「哲学的な知識がアプリオリなものなのか」という問題に直接関連しています。先の2冊もこの問題を扱っていますし、アンソロジーも刊行されました。アプリオリ性に関する議論は再び活性化しており、これからも著作がいろいろ出る予定です。

Albert Casullo & Joshua C. Thurow (2013). The A Priori in Philosophy. Oxford: Oxford University Press.

3、信念の価値、規範性

21世紀の認識論は、いわゆるValue Turnと言われる展開を経て、従来とは異なる形で認識論的な価値、規範性を主題化する研究が多いことが一つの特徴です。信念の価値、規範性をめぐる著作も相次いで出版されました。

Allan Hazlett (2013). A Luxury of the Understanding: On the Value of True Belief. Oxford: Oxford University Press.
John Gibbons. (2013). The Norm of Belief. Oxford: Oxford University Press.

あとは、このアンソロジーも近刊。

Timothy Chan (forthcoming). The Aim of Belief. Oxford: Oxford University Press.

4、徳認識論ブームまだまだ続く

数年来の徳認識論のブームはちょっと下火になってきたとはいえ、まだまだ続く。アンソロジー1冊が出ました。

Tim Henning & David P. Schweikard (2013). Knowledge, Virtue, and Action: Putting Epistemic Virtues to Work. London and New York: Routledge.

そして、徳認識論最大の立役者、Ernest Sosaの哲学についてのアンソロジーも。執筆者には彼の弟子を中心に錚々たるメンバーをずらりと揃えています。

John Turri (ed.) (2013) Virtuous Thoughts: The Philosophy of Ernest Sosa. Dordrecht: Springer.

5、その他

phenomenal conservatism、あるいはdogmatismという、知覚経験あるいは直観が直接的に信念を正当化するという立場についてのアンソロジーが出版されました。これらの立場と対立する立場の間の論争は非常に面白いです。

Chris Tucker (2013). Seemings and Justification: New Essays on Dogmatism and Phenomenal Conservatism. Oxford: Oxford University Press.

あとは、これまた従来からのホットトピック、disagreementについての論文集が出ました。2冊めかな、これで。

David Christensen & Jennifer Lackey (2013). The Epistemology of Disagreement: New Essays. Oxford: Oxford University Press.

対立する立場の支持者に論文を書かせて、各トピックを論争と共に紹介するユニークな入門書、Contemporary Debates in Philosophyの認識論に第二版が出ました。2005年の第一版と比べて入れ替えらるか、追加されたトピックを見れば、最近の認識論の動向が分かるはずです。かなり入れ替えられていて、最近の認識論の展開の早さを象徴しています。日本には2000年代の認識論がほとんど紹介されておらず、残念。

Matthias Steup, John Turri & Ernest Sosa (2013). Contemporary Debates in Epistemology, 2nd Edition. Oxford: Wiley-Blackwell.

おそらく僕が知らず、紹介できなかった新しい動向もあると思います。例えば、今宗教認識論の大きなプロジェクトが複数あるので、それ関連の著作もあるでしょう。しかし、今年はこんなところで勘弁を。それでは皆さん、良いお年を。
posted by hakutaku at 22:48| Comment(1) | TrackBack(0) | 認識論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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Posted by uni-edit at 2014年02月26日 02:17
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