2010年01月18日

文脈主義を学ぶ人のために

より建設的に、文脈主義に関する議論をきちんと学ぶために、何を読めばよいのかを手短に解説したいと思う。もし、まったく知識がない状態で、本格的に標準的ヴァージョンの文脈主義と、そのライバル主体鋭敏性不変主義を学びたいという人がいれば、以下の順番で読むのが、僕のお薦めです。

1. Patrick Rysiew (2007). "Epistemic Contextualism," Stanford Encyclopedia of Philosophy.

かなり詳細なサーヴェイ。Rysiew自身の論文もWAMを支持する代表的なものなので、読む価値あり。


2. John Hawthorne (2004). Knowledge and Lotteries. Oxford University Press.

文脈主義と様々なヴァージョンの不変主義が詳細に比較される。現在の議論の土台を作った、記念碑的著作。読めばいろいろな立場にかなり詳しくなれます。主体鋭敏性不変主義を一応支持する。

3. Jason Stanley (2005). Knowledge and Practical Interests. Oxford University Press.

文脈主義って意味論的にどうなのという、詳細な言語的探求。主体鋭敏性不変主義を支持するが、議論自体はHawthorneとさほど違うわけではない。

4. David Lewis (1979). “Scorekeeping in a Language Game,” Journal of Philosophical Logic 8, 339-359.
5. --- (1996). “Elusive Knowledge,” Australasian Journal of Philosophy, 74(4), 549-567.

ここからは個々の文脈主義者の論文へ。まずはLewisから。かなり極端な外在主義的証拠主義と文脈主義の組み合わせ。Lewisって、やはり天才だよなーと思う。あと、知識は信念を含意しないって、やっぱり極端なこと言う。

6. Stewart Cohen (1988). “How to be a Fallibilist,” Philosophical Perspectives, Volume 2, 91-123.
7. --- (1998) “Contextualist Solutions to Epistemological Problems: Skepticism, Gettier, and the Lottery,” Australasian Journal of Philosophy, 76(2), 289-306.
8. --- (1999). “Contextualism, Skepticism, and The Structure of Reasons," Philosophical Perspectives 13: Epistemology: 57-89.
9. --- (2005), “Knowledge, Speaker, Subject," The Philosophical Quarterly, 55(219), 199-212.

次はCohen。内在主義的証拠主義と、文脈主義の組み合わせ。1998は、Lewisの文脈主義の批判を含むが、後でHellerに再批判されたり。1999は、立場を変えるが、かなり変なことになっちゃう。あるヴァージョンの懐疑論に対しては文脈主義はうまくいかないと敗北宣言して、でも懐疑論の否定を信じることはアプリオリに合理的だ、とむちゃくちゃなこと言う。2005はHawthorneの立場の検討と、文脈主義の擁護。

10. Keith DeRose (1992). “Contextualism and Knowledge Attributions,” Philosophy and Phenomenological Research 52(4), 913-929.
11. --- (1995). “Solving the Skeptical Problem," The Philosophical Review 104(1), 1-52.
12. --- (1999). “Contextualism: An Explanation and Defense,” in The Blackwell Guide to Epistemology, J. Greco and E. Sosa, eds., Malden MA, 185-203.
13. --- (2002). “Assertion, Knowledge and Context," The Philosophical Review, 111(2): 167-203.
14. --- (2004a). "The Problem with Subject-Sensitive Invariantism," Philosophy and Phenomenological Research 68 (2), 346-350.
15. --- (2004b), “Sosa, Safety, Sensitivity, and Skeptical Hypotheses,” in Greco, ed., Ernest Sosa and His Critics. Cambridge, MA: Blackwell, 22-41.
16. --- (2005) "The Ordinary Language Basis for Contextualism, and the New Invariantism," Philosophical Quarterly 55 (219), 172–198.

文脈主義最大の擁護者DeRose登場。最初の2つは、まあ古典なので、読むしかない。2004aと2005は、主体鋭敏性不変主義の批判だが、今はこんな単純にいかないと思っている。2004bは、1995を読んで、DeRoseの立場って、NozickのSensitivityと文脈主義の組み合わせでしょと、誤解!している人にこそ読んで貰いたい。この誤解は、Hawthorneもしているので、彼の本のDeRoseの箇所は、気をつけて読む必要がある。

17. --- (2009). The Case for Contextualism. Oxford University Press.

懐疑論に関するもの以外のDeRoseの論文は、この本でかなり修正された上でまとめられた。だからまあ1995と2004b以外は、この本読めば必要ない。でもまあ、彼の立場の発展を押さえたい人は、上の論文もどうぞ。

18. Matthew McGrath & Jeremy Fantl (2009a). Knowledge in an Uncertain World. Oxford University Press.

主体鋭敏性不変主義の提唱者、McGrath & Fantlが、満を侍して登場。彼らの議論は、めちゃくちゃ細かいので読みにくいかもしれないが、収穫は大きいはず。正直文脈主義関係の論者では、一番考えていると思う。あと彼らの主体鋭敏性不変主義は懐疑論に対しては有効でないと認めている。Stanleyは、この辺簡単に考えすぎてる。Hawthorneのヴァージョンは懐疑論にまだ対処できる。何故そうなるのかが理解できれば、かなりの上級者。

19. --- (2002). "Evidence, Pragmatics, and Justification," Philosophical Review 111 (1), 67-94.
20. --- (2009b). "Critical Study of John Hawthorne's Knowledge and Lotteries and Jason Stanley's Knowledge and Practical Interests," Noûs 43 (1), 178-192.

2002は、彼らの最初の論文。一部の隙もなく組み上げられた論証に感動する。ただあまりに細かいので、後の論文、本では繰り返していない。でも、主体鋭敏性不変主義をたたきたいなら、この論証を批判する必要がある。今まで出てきた批判の試みには2009aの本で答えている。2009bの論文は、Hawthorne、Stanleyの立場との違いを知るために。

文脈主義と不変主義の論争はこれにつきるわけではないが、まあ基本文献ということで。これらを読めば分かるが、文脈主義や主体鋭敏性不変主義の話は、どんどん懐疑論とは無関係になってきている。僕自身がかつてやったのも含めて、日本で書かれたり、発表された文脈主義関係の話は、懐疑論にちょっとこだわりすぎていたと思う。

これけっこう書くの面白かった。好評なら、またやります。文脈主義は、ここに載せたもの以外に、ほんとにいろんなヴァージョンがあるので。
posted by hakutaku at 15:23| Comment(0) | TrackBack(0) | 認識論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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