2008年07月09日

Sensitivityにまつわる諸問題

ふう、最近論文を書いていたのだが、ようやく初稿ができあがったので、ひと休憩。ちょっと今日は、この前書いたまっとうな認識論のことでも書きたいと思う。知識ないし正当化の理論としては、まあいろいろあるわけだが、僕が一番個人的に好きなのは、ノージックのsensitivity条件と言われるものである。僕がこれが好きな理由は、これは外在主義的理論のうちで、唯一明確に、弁別能力に焦点を合わせたものだからだ。この辺はいつか論文を書きたいと思っているので、そのうちにまた詳しく書きたい。

さて、ノージックによれば、sensitivityとは、知識の必要条件であり、以下のように定式化される。

(Sensitivity) if p were false, S wouldn't believe that p.

Sensitivityにはよく知られた問題が、6つほどある。

1.Epistemic Closureの否定につながる。
2.この条件を満たしながらも、知識とは呼べないような例、すなわち反例がたくさんある。
3.類似した二つの命題で、一方は知っていて、他方は知らないという奇妙な事例を許してしまう。
4.必然的真理を取り扱うことができない。

僕自身はこれらの問題は大してクリティカルなものだと考えてはいない。まず1はDeRoseが示したように、sensitivityそのものはclosureと整合的に展開できる。2、3に関しても、細部をいじればまあクリアできないこともない。3はクリプキが80年代にやった講義で触れて、それは出版されてないのだが、なぜか皆知っている。この講義ノートを誰か持っていないかなあと思っているのだが、認識論者の知り合いが少ないので、まだ見つかっていない。4は、まあ可能世界を使う分析にはいつもついてまわる、例えば可能世界意味論にも同じ問題があることが知られている。だからこれはsensitivity特有の問題というわけではない。

結構決定的だなと思うのは、以下の二つである。

5.高階の信念をうまく扱えない。例えばS knows that S doesn't falsely believe that pが成立しているとする。このときSは当然sensitivityを満たすのでなければならない。しかし、

If it were false that S didn't falsely believe that p, S wouldn't believe it.

は必ず偽である。この条件文の前件が満たされるときは、Sがpを信じているときなので、当然後件は満たされない。といわけで、sensitivityはこの高階の信念をうまく扱えない。

6.S knows that pであるとき、S knows that p or qも真であるということは、トリビアルな条件さえ加えれば、疑いようもない。このことは以下のような、比較条件文からもわかる。

(a) If S knows that p, then S is in a position to know that p or q.
(b) If S knows that p or q, then S is in a position to know that p.

前件と後件の間で、Sのepistemic factor、standardrが同一であるとすると、(a)は真で、(b)は偽である。単純に言えば、これは、pを知るのは、p or qを知るよりも簡単だということである。しかし、sensitivityはこれを反映できない。何故なら、p or qを知るためには、

if it were false that p or q, that is, neither p nor q were true, S would believe neither p nor q.

が真でなければならず、pを知るためよりよりも、一つ条件が増えてしまう。すなわち、より難しくなってしまうのだ。

この5,6は、sensitivityのメカニズムそのものに由来する、かなり根深い問題である。5は確かSosaが最初に指摘して、6は誰だっただろうか。Jonathan Vogelだったかな。いやそれよりも前に誰かいたと思う。

5に関してはDeRoseとTim Blackがそれぞれの論文でなんとか乗り越えようと頑張っている。6に関しては、bite the bulletというか、Closureを否定するなら、そうなるよという論文しか見たことがないのだが、Closureを受け入れたい僕のような人にはあまり役に立たないなー。



posted by hakutaku at 05:10| Comment(0) | TrackBack(0) | 認識論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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