2008年06月28日

新刊情報

またもや以前の書き込みから相当時間が空いてしまった。5月に旅行に行ったのと、6月は請け負った仕事や自分の勉強で大忙しで、mixiしか更新していなかった。今も忙しい日々が続いているが、少し息抜きということで…。

来年2009年は認識論内で文脈主義を巡る議論が再び活発になるのではないだろうか。というのも、文脈主義の大立役者であるKeith DeRoseの本"Knowledge, Skepticism, Context"がそれぐらいに出版されると思われるし、文脈主義のライバル一番手、Subject-Sensitive Invariantismの提唱者であるJeremy FantlとMatthew McGrathの本"Knowledge in an Uncertain World"も出版されるからである。これらの本はすでに彼らのホームページでドラフトが公開されているので、興味のある人は是非読んでみて欲しい。

DeRoseらのいわゆる標準的文脈主義はここ20年ぐらいずっと認識論ではホットなトピックだったわけだが、何故かそれについての本が出版されたことはなかった。満を侍してという感じである。Fantl&McGrathも、彼らが提唱した立場は、先にHawthorneやStanleyがそれについての本を書いてしまい、彼らはやや後手に回ってしまった感がある。しかし、彼らの本では、Hawthorne、Stanleyとの違いもいろいろと書かれているので、実に興味深い。

今のところFantl&McGrathの方しか読んでいないが、この本の特徴は過謬主義・不過謬主義の帰結を徹底して追求することにある。そしてどちらをとろうが、その帰結は'mad'であるというパラドキシカルな状況をどのように乗り越えられるかを、実に緊密な仕方で議論していく。

不過謬主義は、もちろん懐疑論と紙一重だし、過謬主義は彼らがPurismと呼ぶ、知識はepistemic factorにスーパーヴィーンするというほとんど全ての認識論者が受け入れてきた見解を否定することになる。この本では、不過謬主義を受け入れたときに生じる懐疑論は、さほどradicalなものではないのではという点も議論されていて、これも実に新しい論点である。

少し褒めすぎかなあ。隠す必要もないので書いてしまうと、Jeremy Fantlというのは僕の指導教官である。この本は僕も校正や、一部の論点にほんの少しだけ協力しているので、普段は口の悪い僕でも、悪口が言えないので困るなあ。

まあそういうことを抜きにしても、両方の本が一級の認識論者の手による刺激的なものであることに間違いはない。認識論の最前線の議論を知りたい人は、読んで損のない内容だと思う。


posted by hakutaku at 06:06| Comment(2) | TrackBack(0) | 認識論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
Fantl&McGrathの本のドラフトが公開されているという情報、どうもありがとうございます。面白そうです。そのうち時間を作って読んでみようと思います。
Posted by M4 at 2008年06月28日 13:16
いえいえ。彼らの本は本人が言っていましたが、相当にdenseなので、ちょっと読みにくいかも知れません。最初の2章と最終章がこの本の殻なので、とりあえずそれらを読めばだいたい内容がつかめると思います。

Subject-Sensitive Invariantismが急速に支持を集めた理由は、Fantl&McGrath、Hawthorne、Stanleyという、その論者が超一級の分析哲学者で、あまりに厳密で隙がない議論を展開するというところにあると思います。ほんと彼らを批判するのは並大抵のことではありません。
Posted by hakutaku at 2008年06月28日 15:40
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